【レポート】withnews編集部に聞く!withコロナ時代にメディアに採用される企画とは
テレワークや在宅勤務の導入が進み、生活者を取り巻く環境はここ数ヶ月間で大きく変わりつつあります。企業のあり方やステークホルダーとのコミュニケーションにも変化が求められ、広報活動におけるメディアリレーションも、新たな転換期を迎えていると言えるでしょう。このような状況下において、今後はどのようにメディアとの関係構築を行なっていくのが良いのでしょうか。
そこで今回は、ひとりひとりの「気になる」を一緒に解決するメディアサイトである朝日新聞社「withnews(ウィズニュース)」編集部の河原夏季氏をお招きして、「withコロナで採用される企画とは」をテーマに、8月4日にオンラインでのトークセッションを開催しました。
これまで様々な企画を形にしてきた河原様から、これから求められるメディアリレーションや企画力について、具体的な事例などもお伺いしました。
コロナ時代でも採用される、3つの企画ポイント
ーー志賀
新型コロナウイルス感染症の拡大をうけて、メディアリレーションに関する相談をうけることが非常に増えてきました。というのも、従来実施していた「メディアキャラバン」や、記者さんとの気軽な会食が開催できないため、メディアとコミュニケーションがとりづらいという悩みを抱えている方が多くいらっしゃるからです。
実は私自身は約5年前からすでにリモートを中心にメディアリレーションを構築しており、コロナ禍においても自身のビジネススタイルをあまり変えてはいません。オンラインでコミュニケーションをとるうえで重要なのは、個別の丁寧なコンタクトやアプローチ、そして企画力だと感じています。
そこで弊社MaVieが考える「採用される企画のポイント」を、まず最初に3つご紹介します。
1点目は、記者からの問い合わせには即レス、即回答すること。
2点目は、媒体や記者の興味関心をリサーチしてから、先方にコンタクトをとること。
そして3点目は、自社だけでなく、業界全体の動向といった付加価値も含めてお伝えできるように、日々情報を収集して準備しておくことです。
現在は多くのメディアや記者さんがオンラインで情報を探しているため、限られた取材時間内でいかに適した情報をお伝えできるかという点が重要だと考えています。
今回は後ほど河原様から、ウィズニュースの特徴や、採用されやすい企画などについて伺いたいと思います。
難しいニュースをかみくだき、若い世代に届ける
ーー河原さん
ウィズニュースは、朝日新聞社が2014年から運営している総合ニュースサイトです。SNSに敏感なスマートフォン世代に向けて、難しいニュースをかみくだきながら、気になる話題を独自の切り口で取材しています。インターネットにフィットした形の記事を届けられるよう、ネットで話題になったトピックを深堀りすることもあります。

特徴は朝日新聞社のノウハウを生かして、徹底した取材を元に記事を作成していること。新聞社では約2000人の記者が日々取材をしているので、グループ内の横のつながりも大切にしながら、それぞれの媒体の特徴にあったスタイルで情報を発信しています。また、取材のリクエスト機能を設けている点もポイントのひとつです。読者やユーザーから取材してほしいネタを随時募集し、記者が調べて記事を執筆しています。
現在私はウィズニュース編集部の編集者や記者として、日々取材をしたり記事を担当したりしています。2010年に朝日新聞社に入社し、愛媛県や埼玉県で記者として勤務した後、紙面の編集者を経て2018年に現職に就きました。
これまでに10代の生きづらさと向き合う「#withyou」という企画や、発達障がいの企画など、様々な連載企画の立ち上げに携わりました。プライペートでは1児の母で、今年2020年の4月に職場に復帰したばかりです。新型コロナに関する新しい企画にも関わっており、バタバタした日々を過ごしています。
ーー志賀
ウィズニュースさんの記事は、様々なプラットフォームでも配信されていますよね。
ーー河原さん
2020年5月には月間で1億5300万ページビューを達成したのですが、多くの方に記事を読んでいただくきっかけになっているのが、他メディアでの記事配信だと思います。Yahoo!ニュースやスマートニュース、LINE NEWSなど多方面で様々なメディアのユーザーの方々に読んでいただいているので、それぞれのプラットフォームを意識しながら日々記事を作成しています。
記事ごとに読んでもらいたい世代に確実に届けられるよう、執筆する際は細かな工夫が欠かせません。例えば記事のタイトルをYahoo!ニュース向けに変更したり、読者にささるような文言を入れたりしています。また、他社と共同で企画を立案することもありますね。
ーー志賀
取材をするうえでプレスリリースを見られることも多いかと思いますが、企画として成立しやすいタイプの特徴などはございますか?おそらく広報が記者さんに企画を持ち込む際には、3つタイプがあるかなと考えていまして。一つ目は「プレスリリース送りっぱなし型」、二つ目は「プレスリリース+電話などの個別フォロー型」、三つ目は「記者と対話を重ねて企画にする提案型」と分類してみました。
ーー河原さん
一度しかお会いしていない広報の方からは、一つ目のアプローチが多いですね。記者によっては頂戴したリリースにきちんと目を通す人もいますが、受け流してしまう場合が多いかと思います。
リリースをメールで受け取った際は、内容に下線が引かれていたり、色がついていたりするとメリハリがあって読みやすいですね。メールのタイトルも大切ですが、本文も含めた全体の「ファーストビュー」の方が重要ではないでしょうか。
新聞記者時代は、二つ目のアプローチが多かったように思います。記者もリリースときちんと向き合えるので、広報の方々にとってもメディアとの接点が増えるはずです。ただ今はコロナの影響で記者がオフィスにいない場合も多いと思うので、状況も変わっているかもしれません。
ーー志賀
ありがとうございます。「ファーストビュー」でメリハリをつけてポイントを伝える手法は、意識するだけで誰でも出来ますよね。ですが、なぜか実行している人が少ないなと感じています。三つ目はいかがでしょうか?
ーー河原さん
企画のレベルによると思います。例えば企画をご提案いただく際に、メディアの特定の媒体や連載の枠に合わせた形で情報をいただけると、こちらの琴線にふれますね。そういった意味では、一番活字につながる場合が多いアプローチではないでしょうか。一度記者としっかりとした関係ができると、その後の企画や記事化にもつながりやすくなるはずです。
ウィズニュースで採用される企画とは

ーー志賀
媒体の特性などをふまえて、ウィズニュースさんで採用される企画などを教えていただけますか?
ーー河原さん
3つポイントがあります。1点目は、現在進行中の連載として取り上げられるかどうかです。実際の例を挙げますと、先述した「#withyou」の企画を私が執筆していた時に、連載企画に的確に提案いただいたものは記事になりました。しっかりと媒体特性を掴み、企画の内容にぴったりとマッチする取材対象をご提案いただいたからこそ、成立した内容だったと思います。
また、企画や連載に記載している記者の署名をもとに、広報やPRの方から連絡をもらうケースもあります。
ーー志賀
記者さんの名前を探したり、連載に合うような企画や情報を提案したりといったアプローチは、企業広報としてすぐに取り組めますよね。記者さんやメディアの特性を見極めてから情報をお伝えした方が、しっかりと受け止めてもらえる確率も上がります。
ーー河原さん
そうですね。なかには、記者が過去に執筆した記事や趣味などを事前に調べてから、連絡をとる広報の方もいらっしゃるみたいです。
ーー志賀
機械的な連絡よりも、相手をきちんと知ったうえで連絡した方が、メッセージを受け取る側としても嬉しいですよね。
ーー河原さん
まさにその通りで、すべての人間関係に関わるものだと思います。そして2点目のポイントは、記者の関心分野を見極めることです。例えばIT系のトピックが好きな記者に対しては、IT関連のネタや情報を提供すると良いと思います。
ーー志賀
弊社の例で言いますと、記者さんの関心分野だけでなく、関連する情報も一緒にお伝えしたことで記事化につながったケースもありました。とあるPRプロジェクトでご支援したクライアントについて、ウィズニュースさんの「#父親のモヤモヤ」という企画で取り上げていただいた時のことです。
私がご提案したトピックは、母親の産後うつを取り上げた映画でした。しかし連載の担当者と話しをしたところ、最初は「父親のモヤモヤを扱う企画なので、父親に直接的に関連する内容でないと難しい」となってしまったんですね。ですが女性が産後うつになってしまう背景には、男性の育児参加の度合いなども関わっています。そこで、より深い情報や関連知識も含めてお伝えした結果、トピックとして取り上げていただいたことがありました。
ーー河原さん
確かに背景のストーリなども合わせて情報をいただけると、記事のイメージが膨らみやすかもしれないですね。そして最後のポイントは、時事性と話題性です。皆さんもすでに意識されているとは思いますが、ネットで話題になっているものが記事になることはよくありますね。もちろん広報の方々だけではなく、周りの知り合いから得た話題の情報を取り上げるケースもあります。
最近の例で言いますと「コロナ禍での不妊治療」をテーマにした記事を書きました。コロナの影響で不妊治療中の夫婦は何を悩んでいるのか、時事性をもたせつつ、当事者の方の声をメインに発信しました。
ーー志賀
ありがとうございます。皆さんたくさんヒントをいただきましたね!他にも広報側から情報を提供する際に、留意しておいた方がよいポイントなどはございますか?
ーー河原さん
記者側の目線としては、情報をご提案いただくのは大変ありがたく思う反面、企画自体はこちらで練りたいと考えているケースもあります。そのため、記事のタイトル案や構成案まですべてご提案いただくことに少し抵抗感がある記者もいるかもしれません。私の場合は、タイトル案をいただけるとイメージが膨らむタイプなので、そのあたりは個々の記者との関係に合わせて進めていただけたらと思います。
また、既に同様の記事やプレスリリースが他社で掲載されている場合は、記者やメディアごとの工夫や味付けが必要になってきますね。
ーー志賀
これは本当にポイントですよね。私も広報育成で何度も伝えることです。他社で取り上げていないような独自の切り口や、まだ記事化されていない情報が重宝されます。私自身も長年PRに従事していますが、企画立案の際には重要なポイントとして考えています。
ーー河原さん
あとは「ウィズニュースさんに最初に情報をお伝えします!」などとお声がけいただくと、とても嬉しいですね。弊社には外部ライターも多くいますので、ぜひ企画などをご提案いただきながら、良い記事を一緒に発信できたらと思います。
編集後記
今回のイベントでは参加者の方に持ち込み企画を発表していただく場も設け、河原様から直接フィードバックをいただきながら、学びや示唆の多い時間を共有させていただきました!
また河原様からは、参加者の皆様に向けて「広報としても重要なライティングスキルは、どのように磨かれていますか」という逆質問をいただきました。皆さんからは、「定期的に自分のブログを書く」、「社内広報でコンテンツを作成し、毎日の日報を大切に書く」、「他社のリリースをみて勉強する」、「SNSなど媒体に合わせたコンテンツを書く練習をする」など、様々な意見がでました。